
求人を出しても応募が来ない。来ても辞退される。やっと入社しても半年で辞めてしまう。
業種を問わず、中小企業の採用は年々厳しくなっています。「給料を上げれば人が来る」と考えて基本給を引き上げた会社もあるでしょう。たしかに給与は大事です。でも、給与だけで勝負しようとすると、資金力のある大手企業には絶対に勝てません。
では、中小企業が大手と違う土俵で勝負するために、何ができるのか。その答えのひとつが**「人事評価制度を整備して、それを採用の場面で見せること」**です。
中小企業の6割は、人事評価制度がない
2025年の中小企業白書によると、全体で約4割の企業しか人事評価制度を設けていません。従業員20人以下の企業では、導入率は35%程度です。
理由で最も多いのは「経営者が全員の状況を把握しているから必要ない」。つまり、社長が直接見ているから大丈夫、という判断です。
社長の側からすれば、それは事実かもしれません。でも問題は、社員の側がどう感じているかです。
「何をすれば評価されるのか基準がわからない」「あの人のほうが楽な仕事をしているのに、なぜ給与が同じなのか」「頑張っても頑張らなくても同じ」——。こうした不満は、制度がないことで生まれます。不満が蓄積した社員は、黙って辞めます。辞める前に「評価に不満があります」と言ってくれる社員は、ほとんどいません。
求職者は「入社後の評価基準」を見ている
最近の採用市場で起きている変化があります。特に20代〜30代の求職者は、応募する前に**「この会社に入ったら、何をすれば評価されるのか」**を確認する傾向が強くなっています。
昔は「仕事内容」「給与」「勤務地」の3つが求人票の主な判断基準でした。今はそこに**「評価制度の有無」「キャリアパスの見える化」「昇給・昇格のルール」**が加わっています。
つまり、求職者が見ているのは「いくらもらえるか」だけではなく、「この会社で頑張ったら、どうなるのか」です。
ここで考えてみてください。同じ業種、同じ地域、同じような給与の会社が2つあったとします。片方は「昇給はある程度社長が判断します」としか書いていない。もう片方は「半年ごとに目標を設定し、達成度に応じて5段階で評価。評価結果は給与に反映されます」と書いてある。応募したくなるのは、どちらでしょうか。
現場仕事こそ、評価制度が効く
「うちは現場仕事だから、評価制度なんて難しい」——そう思う気持ちはわかります。確かに、営業職のように数字で成果を測りやすい仕事とは違います。
でも、現場仕事だからこそ評価すべきポイントは明確にあります。
たとえば、安全管理の実績、事故やクレームの有無、出勤率、納期や工期の遵守、後輩への指導実績、資格の取得。これらはすべて、数字や事実で記録できる評価項目です。
「頑張っている人が報われる仕組みがある」ということが、社員にとって一番のモチベーションになります。 そしてそれは、採用の場面でも同じです。
「うちの会社は、安全を守り続ければちゃんと評価に反映されます」「資格を取ったら手当だけでなく、等級が上がります」——。これを具体的に説明できる会社は、求職者から選ばれます。
「制度がある」だけでは意味がない
ただし、注意点があります。
人事評価制度を作っただけで満足してしまう会社は少なくありません。立派な評価シートを用意して、年に1回記入してもらって、それで終わり。結果がどう給与や昇格に反映されるのかが本人に伝えられていない。これでは、制度がないのとほとんど変わりません。
評価制度が機能するためには、3つのことが必要です。
1つ目は、評価基準を社員に公開すること。 何を、どう評価するのか。これが全員にオープンになっていなければ、「また社長の好き嫌いで決まるんだろう」と思われます。
2つ目は、評価結果を本人にフィードバックすること。 「あなたの今回の評価はこうです。ここが良くて、ここに改善の余地があります」と直接伝える面談の場を設けること。この面談があるかないかで、社員の納得感はまったく違います。
3つ目は、評価結果を実際に給与や昇格に反映すること。 評価が良くても悪くても同じ扱いなら、制度は形骸化します。頑張った人が報われる仕組みでなければ、逆に不信感を生みます。
評価制度の導入は、ホームページにも効く
評価制度を整備したら、それをホームページの採用ページに掲載してください。
「評価制度あり」と一言書くだけでも効果がありますが、できればもう少し具体的に。「年2回の評価面談を実施」「評価に基づく昇給制度あり」「資格取得支援制度と連動」など、具体的な内容が書いてあるほど信頼感は増します。
ハローワークや求人媒体の限られたスペースでは書ききれない情報を、自社のホームページなら十分に伝えられます。求人票で興味を持った人が次に見るのは、必ずその会社のホームページです。 そこに評価制度の情報があるかないかは、応募率に直結します。
当社マスタングでは、人事評価制度のシステム化も支援しています。「評価制度はあるけど、Excelで管理していて限界を感じている」「制度を作ったが運用がうまくいかない」という方は、別記事「人事評価システムの作成ガイド」もあわせてご覧ください。
従業員10人以下でも、評価制度は作れる
「うちはまだ5人しかいないし、評価制度なんて大げさでは?」という声もあります。
むしろ少人数だからこそ、シンプルな制度で効果が出ます。複雑な等級制度やポイント制は必要ありません。
最小限の評価制度は、たった3つの要素で構成できます。「評価する項目を5〜10個決める」「半年に1回、社長と1対1で面談する」「評価結果を賞与か昇給に反映する」。 これだけです。
評価項目は、自社にとって「こういう社員がいてくれたら助かる」という行動をそのまま言語化すればいい。たとえば「無事故・無クレーム」「時間厳守」「報連相の徹底」「後輩への指導」「整理整頓」「資格取得への姿勢」。
大事なのは、立派な制度を作ることではなく、「うちの会社では、これができる人を評価します」と言い切れる状態を作ることです。
まとめ
中小企業の採用力を上げるために必要なのは、必ずしも「給与を上げる」ことだけではありません。
「この会社に入ったら、何をすれば評価されるのか」「どう頑張れば給料が上がるのか」——これが明確に見える会社は、求職者にとって安心できる会社です。
人事評価制度は、社員のモチベーション管理だけでなく、採用の場面で選ばれるための武器になります。
制度の整備に莫大な費用は必要ありません。まずは「何を評価するか」を決めて、それを社員に伝えることから始められます。そして、その仕組みをホームページや求人情報に載せるだけで、他社との差別化が始まります。
人が来ない時代に、人が来る会社は何が違うのか。その違いの1つが、「評価の仕組みを見せられるかどうか」です。
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