
「ホームページに毎月お金をかける意味がわからない」「AIツールに課金するほどの仕事がない」「うちはまだITにお金をかける段階じゃない」
中小企業の社長からよく聞く言葉です。気持ちはわかります。目の前の仕事を回すだけで精一杯なのに、形のないITにお金を使うのは不安でしょう。
でも、1つだけ聞かせてください。今、毎月ITに使っている金額を即答できますか?
即答できない社長は、「投資しすぎ」か「投資しなさすぎ」のどちらかの可能性が高い。そして中小企業の場合、ほとんどが後者です。
日本の中小企業のIT投資は、売上の1%が目安
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、日本企業の売上高に対するIT予算比率は平均で約1.2%です。ただしこれは大企業を含む数字で、中小企業に限ると実態はもっと低いと言われています。
わかりやすくすると、こうなります。
年商1億円の会社なら、年間100万円、月に約8万円。年商5,000万円なら、年間50万円、月に約4万円。
「それだけ?」と思う社長もいるかもしれません。でも、この金額すら使っていない中小企業が大半です。ホームページは5年前に作ったきり放置、業務はExcelと紙、社内連絡は電話とFAX——こういう会社では、IT予算はほぼゼロです。
一方で、欧米企業のIT予算比率は売上の3〜4%。日本企業の3倍です。この差が生産性の差につながっているという指摘は、毎年のように中小企業白書で繰り返されています。
特に注目すべきは、業界による差です。金融業界のIT予算比率が約8%なのに対し、建設・土木は約0.5%。マスタングがお付き合いしている運輸や施設建設の業界は、もともとIT投資が少ない業界です。裏を返せば、この業界で少しでもITに投資すれば、競合と大きな差がつくということでもあります。
「月8万円」で何ができるのか
年商1億円の会社が月8万円をITに使うとして、何ができるのか。具体的に見てみましょう。
ホームページの維持・運用:月1〜3万円。 サーバー・ドメイン費用が月数千円、保守・更新の費用が月1〜2万円。これが最低ライン。ホームページを持っているなら、この費用は「払うか払わないか」ではなく「必ず払うもの」です。
業務効率化ツール:月1〜2万円。 Google Workspace(メール、カレンダー、ドライブ)が1人あたり月680円〜。社員5人なら月3,400円。チャットツール、クラウド会計、勤怠管理——こうしたツールを組み合わせても月1〜2万円で済みます。
AI活用ツール:月2,000〜3,000円。 ChatGPTやClaudeの有料版が月20ドル前後。社長1人が使うだけでも、メール文案、議事録整理、調べものの時間が大幅に短縮できます。
SEO・集客対策:月3〜5万円。 ブログ記事の作成やSEO改善を外注する場合の相場。自社でできるなら費用はゼロですが、時間というコストがかかります。
全部合わせても月8〜10万円。この金額で「ホームページが集客してくれる」「業務時間が毎日30分短縮される」「採用ページがまともに見える」状態が手に入るなら、投資としての費用対効果は十分です。
「コスト」と「投資」を混同しない
IT費用を考えるとき、多くの社長が「コスト」として捉えています。できるだけ安く済ませたい。できればゼロにしたい。
でも、ITは「投資」です。お金を使った結果、何かが返ってくるかどうかで判断すべきものです。
たとえば、ホームページから毎月1件の問い合わせが来て、そのうち3ヶ月に1回受注できるとしたら。1件の受注が30万円だとすれば、年間120万円の売上増。月のHP運用費が3万円なら、年間36万円の投資で120万円のリターン。投資回収率は3倍以上です。
逆に、ホームページに月3万円払っているのに問い合わせがゼロなら、それはお金を捨てているのと同じ。その場合は「IT投資をやめる」のではなく、「投資の仕方を変える」のが正解です。
お金をかけるべきところ、かけなくていいところ
中小企業のIT投資で失敗するパターンは、だいたい決まっています。
失敗パターン1:ホームページの初期制作費に全予算を使う。 100万円かけてきれいなホームページを作ったが、運用費がゼロ。結果、誰にも見つけてもらえないホームページが放置される。
失敗パターン2:高額なシステムを導入して使いこなせない。 営業管理システム、顧客管理システム、在庫管理システム——導入したものの、社員が使いこなせず、結局Excelに戻る。
失敗パターン3:全部無料で済ませようとする。 無料ツールだけで回そうとして、手作業が増え、結局人件費のほうが高くつく。
正解は「小さく始めて、効果を見ながら増やす」です。
中小企業白書のデータでは、IT投資を開始してから継続的に投資を続けた企業は、投資しなかった企業に比べて売上高経常利益率が明らかに改善しています。重要なのは金額の大小よりも「継続すること」です。月2万円でも、1年続ければ効果が蓄積されていきます。
まずはホームページの最低限の運用費と、Google Workspaceのような基本ツール。ここに月2〜3万円。効果が出たら、SEO対策やAIツールに予算を足す。いきなり大きな投資をする必要はありません。
補助金を使えば、実質負担はさらに下がる
中小企業のIT投資には、使える補助金があります。代表的なのは「IT導入補助金」で、ITツールの導入費用の最大2分の1(小規模事業者は最大3分の2)が補助されます。
たとえば、ホームページのリニューアルに60万円かかる場合、IT導入補助金が使えれば実質負担は20〜30万円で済む計算です。
補助金の申請は手間がかかりますが、商工会議所に相談すれば手続きのサポートを受けられます。「IT投資にお金を出せない」と思っている社長こそ、まず補助金を調べてみてください。使わないのは損です。
ITにお金を使わないことのコスト
最後に、IT投資をしない場合に何が起こるかを考えてみてください。
ホームページが古いまま → 取引先の信用が落ちる、求職者が来ない。業務が紙とExcel → 社員の残業が増える、ミスが増える。AIを使わない → 競合がAIで効率化している中、自社だけ取り残される。
ITに投資しないことも、実はコストなのです。 目に見えないだけで、「失っている売上」「無駄にしている時間」「逃している人材」という形で、毎月お金を失い続けています。
売上1億円の会社なら月8万円。5,000万円なら月4万円。まずはこの金額を「毎月のIT予算」として確保するところから始めてみてください。
何に使うかは、その後に考えれば大丈夫です。最初の一歩は「ITに毎月いくら使っているか」を把握すること。次の一歩は「使っていないなら、月いくらなら出せるか」を決めること。金額が決まれば、あとは優先順位をつけて使うだけです。
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