
「AIで文章を書いて、AIに読み上げさせれば、朗読コンテンツが簡単に作れるのでは?」
そんな期待を持って、AI音声読み上げツールを試してみました。結論から言うと、無料版での朗読コンテンツ制作は、現時点では厳しいと感じました。本記事では、実際に試した体験をもとに、AI音声読み上げの現状と課題をお伝えします。
なぜAI音声読み上げを試したのか
きっかけは、コンテンツ制作の効率化を考えたことでした。
昨今、音声コンテンツの需要が高まっています。ポッドキャスト、YouTube動画のナレーション、企業の研修動画など、音声を使った情報発信の機会は増えています。しかし、ナレーターに依頼するとコストがかかりますし、自分で読み上げるには時間と技術が必要です。
そこで思いついたのが、AIの活用です。生成AIで物語やナレーション原稿を作成し、AI音声合成ツールで読み上げさせる。これがうまくいけば、低コストで音声コンテンツを量産できるのではないか。そんな期待を持って検証を始めました。
試した内容
今回試したのは、以下の流れです。
まず、生成AIを使って短い物語を作成しました。テーマは童話風のストーリーで、5分程度で読み終わる長さを想定しました。生成AI自体は優秀で、それなりに読みやすい物語がすぐに出来上がりました。
次に、その物語をAI音声読み上げツールに入力しました。今回は無料で試せるツールをいくつか使ってみました。テキストを入力すると、AIが音声に変換して読み上げてくれるサービスです。
正直な感想:人間の発声とは別物だった
結果は、期待していたものとは程遠いものでした。
抑揚がなく棒読みに聞こえる
最も気になったのは、抑揚のなさです。人間が朗読するときは、文章の内容に合わせて声のトーンや速度を自然に変化させます。盛り上がる場面では声に力が入り、静かな場面ではゆっくり穏やかに読む。そうした緩急があるから、聞いていて心地よいのです。
しかし、AI音声は全体的にフラットでした。文章の切れ目で一定の間を取るものの、感情の起伏が感じられません。どこを聞いても同じテンションで、聞いているうちに単調さが気になってきます。
感情表現が不自然
物語には、喜び、悲しみ、驚きなど、様々な感情が含まれます。人間の朗読者であれば、登場人物の感情に合わせて声色を変えたり、セリフに感情を込めたりします。
AI音声では、この感情表現がうまくいきませんでした。悲しい場面でも淡々と読み上げ、驚きの場面でも平坦なまま。テキスト上の「!」や「?」を認識して多少の変化はつくものの、人間が聞いて自然だと感じるレベルには達していませんでした。
聞き続けるのがつらい
正直なところ、数分聞いた時点で「これは厳しい」と感じました。短い文章の読み上げであれば気にならないかもしれませんが、5分、10分と聞き続けるコンテンツとしては、現時点では実用に耐えないという印象です。
朗読コンテンツは「聞いていて心地よい」ことが重要です。内容が良くても、聞いているのがつらければ、最後まで聞いてもらえません。今回の検証は、早めに中止する判断をしました。
AI音声読み上げの現状
今回の体験を踏まえて、AI音声読み上げの現状を整理します。
得意な用途
AI音声読み上げが比較的うまく機能するのは、以下のような用途です。
情報伝達が目的のナレーションでは、感情表現よりも正確に情報を伝えることが重要です。マニュアルの読み上げ、案内放送、システムの音声ガイドなどは、現状のAI音声でも対応できる場面があります。
短いテキストの読み上げも、AI音声が活躍しやすい領域です。数十秒程度の短い音声であれば、抑揚のなさが気になりにくいです。
苦手な用途
一方で、以下のような用途には現時点では向いていません。
朗読・ストーリーテリングは、今回試したように、感情表現や抑揚が求められるため、AI音声では限界があります。
長時間のナレーションも、単調さが際立ってしまい、聞き手の集中力が続きません。
エンターテインメント性が求められるコンテンツでは、声の魅力や表現力が重要になるため、人間の声に軍配が上がります。
無料版の限界と有料版の可能性
今回は無料で試せるツールを使用しました。無料版には当然ながら制限があり、音声の品質や調整機能が限られている場合が多いです。
有料版のAI音声合成ツールでは、より自然な音声モデルを使用できたり、抑揚や感情のパラメータを細かく調整できたりするものもあります。また、特定の用途に特化した高品質な音声エンジンを提供するサービスも存在します。
今回の検証では有料版までは試していないため、有料版であれば違う結果になる可能性はあります。本格的にビジネスで活用することを検討している場合は、有料版での検証も必要かもしれません。
今後の進化に期待
AI音声合成の技術は、急速に進化しています。
数年前のAI音声と比べれば、現在の音声は格段に自然になっています。イントネーションの不自然さや、機械的な響きは、かなり改善されてきました。この進化のスピードを考えると、近い将来、朗読コンテンツにも使えるレベルに達する可能性は十分にあります。
実際、英語圏では感情表現が可能なAI音声サービスが登場しており、日本語対応も進んでいます。技術の進歩を見守りながら、定期的に再検証してみる価値はあるでしょう。
ビジネス活用を検討する際のポイント
AI音声読み上げの導入を検討している方に向けて、ポイントを整理します。
用途を明確にすることが重要です。「何のために音声が必要か」を明確にし、AI音声が適しているかを判断しましょう。情報伝達が目的なら検討の余地がありますが、エンターテインメント性が求められる用途には慎重になるべきです。
必ず実際に聞いて判断してください。デモ音声だけで判断せず、実際に自分のコンテンツを読み上げさせてみることが大切です。短いサンプルでは気にならなくても、長文になると印象が変わることがあります。
人間との使い分けを考えましょう。すべてをAIで置き換えようとせず、AIが得意な部分と人間が担うべき部分を切り分ける発想が現実的です。
マスタングのAI活用支援
当社マスタングでは、生成AIを活用した業務効率化を支援しています。
今回のAI音声のように、「試してみたけど思ったほどではなかった」というケースは珍しくありません。AIは万能ではなく、得意・不得意があります。当社では、お客様の業務内容に合わせて、AIが本当に効果を発揮できる領域を見極め、適切な活用方法をご提案しています。
「AIを導入したいが、何に使えるか分からない」「試してみたがうまくいかなかった」といったご相談も歓迎です。
まとめ
AI音声読み上げで朗読コンテンツを作る試みは、現時点では厳しい結果となりました。
主な課題は、抑揚のなさと感情表現の不自然さです。短い情報伝達には使えても、長時間聞き続けるコンテンツには向いていないと感じました。
ただし、これは無料版での検証結果であり、有料版では異なる可能性があります。また、AI音声合成の技術は急速に進化しており、今後に期待が持てる分野でもあります。
AI活用を検討する際は、用途に合っているかを見極め、実際に試して判断することが大切です。すべてをAIに置き換えようとせず、適材適所で活用する視点を持ちましょう。


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