
「既存の人事評価ツールが自社の評価制度に合わない」「Excelでの管理に限界を感じている」——そんな悩みを抱える中小企業は少なくありません。
人事評価システムを導入する際、最も重要なのは「自社に合った要件を明確にすること」です。本記事では、人事評価システムの作成を検討している経営者・人事担当者の方に向けて、要件の決め方と考え方を詳しく解説します。
なぜ「要件定義」が重要なのか
人事評価システムの導入がうまくいかない原因の多くは、要件が曖昧なまま進めてしまうことにあります。
「とりあえず有名なツールを導入したが、自社の評価制度と合わなかった」「カスタマイズしようとしたら追加費用がかさんだ」といった声は珍しくありません。逆に、自社開発を選んだものの「何を作ればいいかわからないまま開発会社に丸投げした結果、使いにくいシステムができてしまった」というケースもあります。
どのような形で人事評価システムを導入するにしても、まず自社の要件を整理することが成功の鍵です。
要件を決める前に整理すべき3つのこと
システムの要件を考える前に、以下の3点を社内で整理しておきましょう。
1. 現在の評価制度の棚卸し
まず、自社で現在どのような評価を行っているかを整理します。評価の種類(行動評価、成果評価、能力評価など)、評価の頻度(年1回、半期ごと、四半期ごとなど)、評価項目と評価基準、評価者と被評価者の関係(直属上司のみか、360度評価か)といった点を明確にしましょう。
「なんとなく上司が評価している」という状態であれば、システム導入の前に評価制度自体を設計する必要があります。
2. 現状の課題の洗い出し
現在の評価業務で困っていることをリストアップします。よくある課題としては、Excelファイルが散在して管理できない、評価の進捗状況が把握できない、過去の評価履歴を参照しにくい、評価基準が評価者によってバラバラ、集計作業に時間がかかる、などがあります。
課題を明確にすることで、システムに求める機能の優先順位が見えてきます。
3. 導入の目的の明確化
人事評価システムを導入して何を実現したいのかを言語化します。単なる業務効率化なのか、評価の公平性・透明性の向上なのか、人材育成への活用なのか。目的によって、必要な機能や重視すべきポイントが変わります。
人事評価システムに必要な機能の考え方
要件を決める際は、「必須機能」と「あれば便利な機能」を分けて考えることが重要です。
必須機能の例
ユーザー管理機能として、従業員情報の登録・管理、部署・役職・等級の設定、評価者・被評価者の紐付けが必要です。
評価シート機能では、評価項目・評価基準の設定、自己評価・上司評価の入力、コメント・フィードバックの記録ができることが求められます。
ワークフロー機能として、目標設定から最終評価までの流れの管理、承認・差戻しの仕組み、進捗状況の可視化が重要です。
データ管理機能では、評価履歴の保存・参照、評価結果の集計・出力ができる必要があります。
あれば便利な機能の例
1on1面談の記録機能、目標の進捗管理機能、評価結果の分析・レポート機能、他システム(給与計算、勤怠管理など)との連携、スマートフォン対応などは、あれば便利ですが、初期段階では優先度を下げても良い機能です。
機能の優先順位の決め方
すべての機能を最初から盛り込もうとすると、開発期間もコストも膨らみます。まずは必須機能に絞って導入し、運用しながら段階的に機能を追加していく方法がおすすめです。
既存SaaSか、カスタム開発か
人事評価システムの導入方法は、大きく分けて2つあります。
既存SaaSの場合
カオナビ、HRBrain、あしたのクラウドなど、多くのSaaS型人事評価ツールが提供されています。メリットとしては、すぐに導入できる、初期費用が抑えられる、アップデートが自動で行われる点があります。一方、デメリットとしては、自社の評価制度に完全にフィットしない場合がある、カスタマイズに制限がある、月額費用が継続的にかかる点が挙げられます。
評価制度が一般的な形式で、特殊なカスタマイズが不要な場合は、SaaSが適しています。
カスタム開発の場合
自社専用のシステムをゼロから開発する方法です。メリットは、自社の評価制度に完全に合わせられる、独自のワークフローを実現できる、長期的にはコストを抑えられる可能性がある点です。デメリットは、初期開発に時間とコストがかかる、保守・運用の体制が必要になる点です。
評価制度が独自性が高い場合や、既存SaaSでは対応できない要件がある場合は、カスタム開発が選択肢になります。
要件定義の進め方
実際に要件を定義する際のステップを紹介します。
ステップ1:関係者へのヒアリング
経営層、人事担当者、現場の管理職など、評価に関わる人たちから意見を集めます。それぞれの立場で求めるものが異なるため、多角的な視点で要件を洗い出すことが重要です。
ステップ2:業務フローの可視化
目標設定から最終評価までの流れを図に起こします。誰が、いつ、何をするのかを明確にすることで、システムに必要なワークフロー機能が見えてきます。
ステップ3:要件の優先順位付け
洗い出した要件を「必須」「重要」「あれば良い」の3段階に分類します。予算と納期を考慮しながら、最初のリリースに含める機能を決定します。
ステップ4:開発会社との擦り合わせ
カスタム開発の場合は、開発会社と要件を詳細に擦り合わせます。この段階で曖昧な点を残さないことが、後のトラブルを防ぎます。
マスタングの人事評価システム開発実績
当社マスタングでは、中小企業向けの人事評価システム開発を手がけています。
実際に開発したシステムでは、行動評価シート(年間)と成果評価シート(半期)の2種類の評価を管理し、目標設定から評価完了までの一連のワークフローをシステム化しました。評価制度の「見える化」と「一貫性」を重視し、従業員が納得感を持てる評価プロセスの実現を支援しています。
お客様との打ち合わせを重ね、評価制度の整理から要件定義、システム構築までを一貫してサポートしています。「評価制度はあるが、うまく運用できていない」「どんなシステムが必要かわからない」という段階からでもご相談いただけます。
まとめ
人事評価システムを作成する際に最も重要なのは、自社に合った要件を明確にすることです。
まず現在の評価制度を棚卸しし、課題と導入目的を整理する。次に必要な機能を「必須」と「あれば便利」に分けて優先順位をつける。そのうえで、既存SaaSとカスタム開発のどちらが適しているかを判断する。この順序で進めることで、導入後に「思っていたものと違った」という事態を防げます。
評価制度の「見える化」と「一貫性」を実現するシステムは、単なる業務効率化にとどまらず、人材育成や組織強化の土台となります。自社に最適な人事評価システムの構築に向けて、まずは要件の整理から始めてみてください。


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